幻の柑橘を未来へ。上勝町で受け継がれる「ゆこう」の物語
徳島県上勝町で古くから育てられてきた「ゆこう(柚香)」。 スーパーでは、ほとんど見かけない柑橘です。ゆずとダイダイが自然に交わって生まれたとされる希少な柑橘で、生産量のほとんどは上勝町周辺。果実として市場へ並ぶことは少なく、その多くが果汁や加工品として使われることから、「幻の柑橘」と呼ばれています。
料理の味を引き立て、どんな食材とも自然に寄り添うゆこうは、昔から地域の食卓に欠かせない存在でした。 上勝町周辺では、郷土料理の「かきまぜ寿司」にゆこう酢を使う文化が今も残っています。誰かに食べてもらうため。家族が集まる日に使うため。
ゆこうは、利益のためではなく、暮らしの中で受け継がれてきた果実なのです。
| 暮らしの中で、200年近く受け継がれてきたもの
そのゆこうを、栽培から加工まで手がけているのが、上勝町の浅野農園です。
「田舎に住みたかったんです」。
そう笑って話す浅野さん。

大学卒業後は県外で働いていましたが、幼い頃から祖父母の暮らす上勝町へ帰る時間が好きだったといいます。 目指していたのは「農家になること」ではなく、この土地で暮らすことでした。祖父母から受け継いだ里山で、すだちやゆず、そしてゆこうを育て始めました。 ところが、就農して間もなく、一つの疑問にぶつかります。 ゆこうだけ、果実としての価値が極端に低かったのです。 市場ではほとんどが加工用。果汁として取引されるため、価格も決して高くはありません。
地域の人へ尋ねると、返ってきたのは意外な答えでした。
「家で使うためじゃ」。
「親戚へあげるため」。
「余ったら出荷するくらい」。
祖父母をはじめ、地域の人たちは「残そう」と意識していたわけではありません。ただ、大切だから育て続けてきました。 その積み重ねが、200年近く続く食文化を守ってきたのだと気づいた瞬間でした。
「ゆこうこそ、残していかなければいけない」。
その想いが、浅野さんの原点になりました。 そして、ゆこうをもっと多くの人へ届けたい。その答えの一つが、マーマレードでした。
TAG STOREで取り扱い中のマーマレードには、果実のおいしさだけでは語りきれない物語が詰まっています。 「ダルメイン世界マーマレードアワード」金賞は、一度の挑戦で手にしたものではありません。

約3年前からアマチュア部門への挑戦を重ね、製法や糖度、果皮の厚みまで何度も見直しながら、少しずつ磨き上げてきました。 賞を取ることだけが目的ではありません。 世界中のジャッジから届く言葉を受け止め、もっとおいしくしたい。もっとゆこうを知ってほしい。 その繰り返しが、結果としてプロ部門での金賞受賞へとつながりました。 受賞の知らせを受けたとき、驚きより先に浮かんだのは「やっぱり、この味だった」という確信だったそうです。

積み重ねてきた時間が、そのまま自信へ変わった瞬間でした。 TAG STOREで届けたいのは、一瓶のマーマレードだけではありません。 上勝町にしか残っていない風景。祖父母から受け継がれた里山。何気ない暮らしの中で守られてきた食文化。そのすべてが、この一瓶につながっています。
パンに塗るだけではもったいない。 クリームチーズやヨーグルト、お肉料理にもよく合う、やさしい香りと上品な酸味。


幻の柑橘と出会うことは、その土地の文化に触れることでもあります。 200年近く、この土地の暮らしの中で受け継がれてきたゆこう。 その味を、これからも残していくために。
そんな物語の詰まった一瓶を、ぜひ味わってみてください。
